私が恋を知る頃に
ミーティングも終わりに近づいた頃、突然俺のPHSが鳴った。
「すいません、ちょっとでます。」
先生方に断りを入れてから、席を立つ。
「はい、瀬川です。」
"瀬川先生、お忙しい所すいません。穂海ちゃんなんですが、30分前くらいから魘されてて様子を見てたんですけど、さっきからちょっとパニック起こしちゃって、過呼吸を起こしかけてるんです。でも、誰も近寄らせてくれなくて…"
「わかりました。ちょっと、待っててください」
電話は繋いだまま、先生達の方に駆け足で戻る。
「清水先生、穂海ちゃん夢でパニック起こしちゃってるみたいで、ちょっと俺、様子を見に行ってきてもいいですか?」
そう言うと、清水先生は前苑のこともあってか、すぐに了承してくれた。
むしろ、自分も着いていく と、一緒に来てくれることになった。
「俺、鎮静剤取ってから行くから、瀬川くん先行ってて。あまり、刺激しないであげて。とりあえず、まずはパニックを収めること優先で。」
「はい、わかりました。」
急いで、穂海ちゃんの病室に向かうと、穂海ちゃんは病室の隅で布団を被りながら泣いていた。
看護師さんの言う通り、呼吸もかなり苦しそうだ。
さらに、病室の中には、倒された点滴台や投げられたであろう物たちが散乱している。
「穂海ちゃん、わかる?小児科の瀬川です。ちょっと近付いてもいいかな?」
そう声をかけながら、そっと穂海ちゃんに近付いていく。
「いやあっ!!やだっ、やめてっ!!来ないでっっっ!!!!!!!!」
「どうした?怖い夢見ちゃったかな?1回、落ち着こうか、息も苦しいでしょ?」
できるだけ優しい声でゆっくり話しかけるが、穂海ちゃんは完全に怖さに支配されてしまっているようで、俺たちの言葉は届いていないようだ。
「ごめ、ごめんなさいっ、ごめんなさいっっ、許して…許してっ…………もう、いやぁ…」
時折見える布団から覗く顔は真っ赤で、恐らく呼吸困難に陥りかけている。
それでも、清水先生が鎮静剤を持ってくるまでは、まだ無理やり近付くことも出来ず、ただ声をかけるのみ。
「穂海ちゃん、穂海ちゃん、よく見てごらん、誰も穂海ちゃんのこと傷つけないからね。大丈夫だよ、大丈夫だから、ゆっくり息してごらん。」
「いやぁぁぁ、ごめんなさい、ごめんなさいい!!」
「穂海ちゃ…」
そこまで言いかけたところで、清水先生が病室に入ってきた。
「穂海ちゃん、ごめんね、急に来てびっくりさせちゃったね、大丈夫だからゆっくり深呼吸だよ、大丈夫、大丈夫」
そう言って清水先生が少し強引に穂海ちゃんを抱きしめる。
それから、目で合図が送られてきて、その隙に俺が穂海ちゃんに鎮静剤を打つ。
「いやぁっっ!!」
最初こそ、暴れていた穂海ちゃんだったが、時間が経つにつれ、鎮静剤が効いてきたのか、暴れるのをやめ、静かに涙を流すようになった。
「ヒック……グスッ…………ぃゃぁ………………」
「大丈夫、大丈夫。怖くないよ。誰も穂海ちゃんを傷つけないからね。」
清水先生に抱っこされた穂海ちゃんは、ベッドに戻され、酸素マスクをつけられる。
「よしよし、ごめんね、息苦しかったでしょ?コレつけたら少し楽になるから、ちょっと我慢してね」
「グスッ…………ヒック…ヒック……」
「好きなだけ泣いていいよ。大丈夫。嫌な夢見て怖かったね。もう安心していいからね。」
そう穂海ちゃんを宥める清水先生を俺は立って見ることしか出来ず、少し不甲斐ない気持ちになる。
せめて…の思いで、俺は穂海ちゃんの手をキュッと握る。
冷えきった手を温めるように、冷たくなった心が少しでも温かくなってくれるように、そう思いながら手を握っていると、なんだか、俺まで切なくなってきて、涙が込み上げてきた。
「大丈夫、大丈夫、きっと、俺が助けてあげるからね…」
「すいません、ちょっとでます。」
先生方に断りを入れてから、席を立つ。
「はい、瀬川です。」
"瀬川先生、お忙しい所すいません。穂海ちゃんなんですが、30分前くらいから魘されてて様子を見てたんですけど、さっきからちょっとパニック起こしちゃって、過呼吸を起こしかけてるんです。でも、誰も近寄らせてくれなくて…"
「わかりました。ちょっと、待っててください」
電話は繋いだまま、先生達の方に駆け足で戻る。
「清水先生、穂海ちゃん夢でパニック起こしちゃってるみたいで、ちょっと俺、様子を見に行ってきてもいいですか?」
そう言うと、清水先生は前苑のこともあってか、すぐに了承してくれた。
むしろ、自分も着いていく と、一緒に来てくれることになった。
「俺、鎮静剤取ってから行くから、瀬川くん先行ってて。あまり、刺激しないであげて。とりあえず、まずはパニックを収めること優先で。」
「はい、わかりました。」
急いで、穂海ちゃんの病室に向かうと、穂海ちゃんは病室の隅で布団を被りながら泣いていた。
看護師さんの言う通り、呼吸もかなり苦しそうだ。
さらに、病室の中には、倒された点滴台や投げられたであろう物たちが散乱している。
「穂海ちゃん、わかる?小児科の瀬川です。ちょっと近付いてもいいかな?」
そう声をかけながら、そっと穂海ちゃんに近付いていく。
「いやあっ!!やだっ、やめてっ!!来ないでっっっ!!!!!!!!」
「どうした?怖い夢見ちゃったかな?1回、落ち着こうか、息も苦しいでしょ?」
できるだけ優しい声でゆっくり話しかけるが、穂海ちゃんは完全に怖さに支配されてしまっているようで、俺たちの言葉は届いていないようだ。
「ごめ、ごめんなさいっ、ごめんなさいっっ、許して…許してっ…………もう、いやぁ…」
時折見える布団から覗く顔は真っ赤で、恐らく呼吸困難に陥りかけている。
それでも、清水先生が鎮静剤を持ってくるまでは、まだ無理やり近付くことも出来ず、ただ声をかけるのみ。
「穂海ちゃん、穂海ちゃん、よく見てごらん、誰も穂海ちゃんのこと傷つけないからね。大丈夫だよ、大丈夫だから、ゆっくり息してごらん。」
「いやぁぁぁ、ごめんなさい、ごめんなさいい!!」
「穂海ちゃ…」
そこまで言いかけたところで、清水先生が病室に入ってきた。
「穂海ちゃん、ごめんね、急に来てびっくりさせちゃったね、大丈夫だからゆっくり深呼吸だよ、大丈夫、大丈夫」
そう言って清水先生が少し強引に穂海ちゃんを抱きしめる。
それから、目で合図が送られてきて、その隙に俺が穂海ちゃんに鎮静剤を打つ。
「いやぁっっ!!」
最初こそ、暴れていた穂海ちゃんだったが、時間が経つにつれ、鎮静剤が効いてきたのか、暴れるのをやめ、静かに涙を流すようになった。
「ヒック……グスッ…………ぃゃぁ………………」
「大丈夫、大丈夫。怖くないよ。誰も穂海ちゃんを傷つけないからね。」
清水先生に抱っこされた穂海ちゃんは、ベッドに戻され、酸素マスクをつけられる。
「よしよし、ごめんね、息苦しかったでしょ?コレつけたら少し楽になるから、ちょっと我慢してね」
「グスッ…………ヒック…ヒック……」
「好きなだけ泣いていいよ。大丈夫。嫌な夢見て怖かったね。もう安心していいからね。」
そう穂海ちゃんを宥める清水先生を俺は立って見ることしか出来ず、少し不甲斐ない気持ちになる。
せめて…の思いで、俺は穂海ちゃんの手をキュッと握る。
冷えきった手を温めるように、冷たくなった心が少しでも温かくなってくれるように、そう思いながら手を握っていると、なんだか、俺まで切なくなってきて、涙が込み上げてきた。
「大丈夫、大丈夫、きっと、俺が助けてあげるからね…」