私が恋を知る頃に
目を覚ますと、もう窓の外は真っ暗だった。

あれ、私何してたんだっけ……

あ、そっか

倒れて頭、ぶつけたんだっけ…

そっと額を触ると、包帯の感触がした。

傷はまだ、少し痛む。

でも、それより…………

さっき起きてからずっと胸がツキツキと痛んでいた。

物理的な痛み…じゃなくて、内面からの痛み。

昔、よく感じてた痛み。

寂しくて悲しくて

慣れているはずの一人がものすごく怖くなる。

誰か傍にいて欲しい

でも、私はこんなんだから、誰も寄り添ってなんてくれない。

鼻の奥がツンとして、目から雫が2粒溢れる。

寂しい

寂しい

一人はいや

一人にしないで

ごめんなさい…

迷惑かけてごめんなさい……

いい子にするから、そばにいさせて

じっとしてるから

静かにしてるから

だから、捨てないで

置いていかないで

「__ちゃん、穂海ちゃん?どうした?傷、痛む?」

突然の声に驚いて顔を上げると、そこには優しい顔の瀬川先生…

その顔を見ただけで、何故か胸が暖かくなってさらに涙が溢れてくる。

「あらら、どうした?どこか、苦しい?」

ウウン

「違う?……じゃあ怖い夢でも見たのかな?」

ウウン

「それも違うのか…もう、そんなに泣いてどうしたの?また、苦しくなっちゃうよ?」

優しい言葉をかけられるたび、嬉しさなのかなんなのか、どんどん涙が溢れて止まらない。

「………………さ、びしかった」

「…よしよし、そっか、ごめんね、目覚めたのにすぐに気付いてあげられなくて。寂しい思いさせちゃったんだね。そっかそっか、でも、もう大丈夫だよ。俺がここにいてあげるから。大丈夫。だから、泣かないで?」

さらに優しい言葉をかけられ、胸がいっぱいになる。

背中を摩ってくれる手は暖かくて、また涙が出た。

「大丈夫、大丈夫。もう寂しくないよ。」

ずっとかけられたかった言葉

何年もこうして欲しかった

色々な感情が溢れ出して、涙はしばらく止まる気配がない。

でも、こうして貰えるなら、まだ少し涙は止まらなくてもいいや…
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