私が恋を知る頃に
「穂海ちゃん」

「…………なに」

「…さっきは、急に驚かせちゃったよね。ごめんね。」

「……うん」

先生の声は、ずっと優しくて、私の心を落ち着かせる。

「あの人はね、前に1回話したことある清水先生の奥さんなんだ。前もって伝えておくべきだったね、ほんとにごめん。」

「…うん」

「…………穂海ちゃんを不安にさせたかったわけじゃないんだ。…清水先生の奥さんは、穂海ちゃんと似たような経験してきたから、もしかしたら穂海の力になれるかなって思ってさ。もし穂海ちゃんがいいなら、一度話してみないかな?」

清水先生の奥さん…

きっと、悪い人じゃないし、怖くない人だとは思う。

……でも、まだ知らない人と会うのは怖いな…

「その人、怖くない?」

「うん。怖くない。俺は、清水先生の奥さんとは知り合いだし、信用していいよ。」

「……先生は、一緒にいてくれる?」

「穂海ちゃんが望むなら、そうするよ。一緒にいる。」

……先生が一緒にいてくれるなら

「…じゃあ……会って…もいいよ」

「ほんと?…よかった。なら、明日にでも会えるようにしておくよ。」

先生の顔は、少し嬉しそうで、優しく笑って私の頭を撫でてくれた。
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