私が恋を知る頃に

碧琉side

寝息を立て始めたのを確認して、頭を撫でてからそっと病室を出る。

今日は、色々あって充実した1日になった。

午前中は、前苑…もとい清水に来てもらって軽いカウンセリングのようなものをしてもらった。

終始どこか怯えてる様子ではあったけど、自分と同じ状況にあった清水の話を聞けて、穂海ちゃんも少し気が楽になったみたいに思えた。

でも、やっぱり初対面だと緊張もあってか、清水が帰ってからは疲れた様子だった。

疲れからか、悪夢を見たようで取り乱してしまったし、一時はどうなることかと思ったけど、最終的には、また心を開いてくれるきっかけになった。

穂海ちゃんは、いつもどこかで遠慮していて、人と距離を置く癖がある。

きっと、今まで生きてきた中で身につけた穂海ちゃんなりの処世術だったんだろう。

でも、今まで我慢してきた分俺には目一杯甘えて欲しいし、わがままだって言ってくれて良い。

親の前でも解けなかったであろう緊張も、俺の前では解いてもらいたい。

穂海ちゃんに会ってからずっと思ってたけど、最近だんだんと心を開いてくれるようになった。

まだ、看護師さんとかは怖いみたいだけど、俺や清水先生、あと兄貴にはだいぶ慣れたようで、普通に話せるくらいにはなった。

俺に関しては、触れても怯えないでくれるくらいまで距離が近付いた。

……あと問題は、初対面の人だな。

今度警察が来る。出来れば、そばに居たいけど、もしかしたらそれも叶わないかもしれない。

だから、その前にできるだけ初対面の人への緊張が減るようにしたかったんだけど……

やっぱり、まだ暴力を受け続けていた日常から離れて日が浅いのもあって、それはかなり難しそうだ。

相手が暴力を振るってこないとわかると、少し緊張が緩むようだけど、それまでは相手をかなり警戒してる。

下手をするとパニックを起こしかねない。

仮に、俺が傍にいてあげられない状況になった場合、すぐに俺を呼べるような体制は取るつもりだけど、それでもきっと初対面の人と一対大勢で話すとなると心に大きな負担がかかるだろう。

それが新たなトラウマに繋がらなければいいんだけど……

そこだけが心配だ。
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