私が恋を知る頃に
木曜日

今日は、明日の事情聴取のため事前に警察側と病院側でミーティングを行うことになっていた。

明日はどんな体制でやるのか、時間はどのくらいか、それが穂海ちゃんの負担にならないか…

話し合いの中で、穂海ちゃんに負担がかからない方法を一番に選んでいくつもりだ。

ミーティングは朝9時から。会議室で。

30分程前に会議室に入ると、まだ誰も来ていなかった。

俺は持ち込んだノートパソコンで昨日の分の患者さんの容態と、今日の指針に目を通していく。



悠木 穂海

昨日夕方に悪夢により中程度のパニックを起こしたが、当時担当医がついていたため、短時間で落ち着いた。
備考:今後も、夢によってパニックが引き起こされる可能性が大きい。無論、昼間もだが、夜間は特に注意を払って様子を見るように。パニックを起こした場合は、看護師が対応せずに、瀬川、清水のどちらかを呼ぶこと。
備考2:12月5日金曜日に警察による事情聴取あり。



うん。これでいいかな。

今日の指針も昨日と変わらず、様子見で少しずつ不安を解消し、PTSDの克服を目指す感じかな。

んーーと大きく伸びをしたところで、清水先生が入ってきた。

「おはよう、瀬川くん。相変わらず早いね~」

「おはようございます。昨晩は、ずっと穂海ちゃんについていたんで、帰ってないんです。それで、ちょっと時間空いちゃって早く来てました。先生は、お子さんのお見送りですか?」

「うん。今朝は望笑夏がぐずっちゃってさ~朱鳥も今日は何だか調子良くないみたいで、朝寝込んでたから心配で。」

前苑、寝込んでるのか。

最近、だいぶ元気だと思ってたけど、やっぱり体弱いのは変わってないのかもな。

「そうなんですか。…前苑、大丈夫ですか?もしかしたら、前に病院来た時に菌拾っちゃったとか…」

「それは大いに有り得るね。今朝は熱なかったんだけど、上がってくるかな……、一応、いつも具合悪くなったら連絡してって言ってるんだけど、朱鳥は我慢しようとするからな~、昼休み様子見に行くか。」

「そうですね、この時期だしインフルエンザも怖いですもんね、前苑も心配だけど、感染症となるとお子さんに移ったらそれも怖いですもんね。」

「ほんとにな。葉月は、あんまり熱出したりしない方なんだけど、柚月がな~、柚月は朱鳥に似て少し体弱いから熱も上がりやすいし、本当に心配だよ。2人がダウンしちゃったら、朱鳥は柚月の面倒みれないし、俺も休まざるを得なくなるからね……」

そんな他愛もない話をしていると、部屋の扉がノックされた。

コンコンッ

「はい」

「失礼します。」

入ってきたのは、兄貴……と、警察の面々。

時計を見てみると、8:53

普段あまり関わることの無い警察に少し緊張を覚えながら、準備に取り掛かる。

いよいよ、ミーティングが始まる。
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