私が恋を知る頃に
病院につき、空いてる診察室に入る。

朱鳥を診察用のベッドに寝かせてから、もう一度熱を測った。

ピピピピッ♪ピピピピッ♪

38.9…わずかだけど、確実に上がってきてる。

これは、今夜は病院にお泊まりコースかな……

「朱鳥、病院ついたから、軽く診察して検査するね。」

朱鳥は薄く目を開け、それから小さく頷いた。

「聴診するよ。少しひんやりするけど我慢してね」

音は正常かな。喘息も出ていないようだし。

「朱鳥、こっち向ける?ちょっと喉見せて」

喉は…少し腫れてるかな……

あとは、あの検査だけ。

みんな嫌がって子どもは泣き叫ぶあれ……

「朱鳥、インフルエンザの検査するね。ちょっと痛いかもしれないけど、すぐ済むから。」

……コクン

本当は嫌なのかもしれないけど、今の朱鳥には抵抗する気力も無さそうだ。

「寝たままだとやりにくいから、ちょっと辛いと思うけど体起こすよ。壁によしかかってていいから。」

コクン

朱鳥の背中を支え、体を起こす。

「ごめんね、ちょっと痛いよ~」

長い綿棒を取り出し、鼻の奥に入れる。

朱鳥は一瞬顔をしかめたが、すぐに元の表情に戻った。

「はい、終わり。お疲れさま。」

ティッシュで鼻を拭ってやってから、朱鳥を再び寝かせる。

検査結果はすぐにでる。

結果は……



陽性

あちゃー…インフルか……

「朱鳥、インフル陽性だった。今日は、まだ熱上がりそうだし、俺も夜勤だから、とりあえず一晩入院しよっか。」

そう言うと、朱鳥は目を開け、潤んだ瞳で俺を見つめる。

「…ごめんね、嫌なのは知ってる。……でも、家に返すのは心配なんだ。俺も、明日の夕方まで帰れないかや側にいてあげられないし、その間何かあったら大変でしょ?インフルは、たまに幻覚とか見る人もいるから、パニックになったり異常行動起こしたら怖いからさ。……お願いだから、一晩入院してくれないかな?」

いつもより、ゆっくりそう伝えると、朱鳥は嫌そうな顔をしながらも、小さく頷いてくれた。

「ありがとう。じゃあ、ひとまず病室行こうか。病室着いたら、解熱剤の点滴打とうな。」

朱鳥の顔は浮かないままだった。
< 65 / 282 >

この作品をシェア

pagetop