私が恋を知る頃に
パコソンを医局から取ってきて、柚月を連れて隔離室に入る。

隔離室のベッドに柚月を寝かせてから天井から伸びるフックに点滴をかける。

毛布をかけて、汗を拭いてから冷えピタを貼り直した。

パソコンを開き、午後の分の仕事を片付けていく。

しばらくすると、柚月が目を覚ました。

「……んぅ…………パパ…」

まだ少し虚ろな目がこちらを向いている。

「おはよう。点滴もうすこしで終わるからね。もうちょっと我慢してね。辛かったらまだ寝てていいよ。」

…………コクン

柚月はそう頷いたものの、まだとろんとした目でこちらを見ている。

何かな…と思い、待っていると柚月が白衣の袖を引いてきた。

「…………パパ、抱っこ…」

あぁ、抱っこか。

柚月も朱鳥に似て抱っこがすきなんだな。

「今日は甘えん坊さんだね~、いいよ、いくらでもしてあげる。」

ベッドの縁に腰をかけてから、柚月を抱き上げる。

「よしよし、しんどいね、すぐ良くなるからもう少し辛抱な」

背中をトントンとリズムよく優しく叩いてやると、柚月はまたウトウトし始めて、数分してまた寝息が聞こえてきた。

普段はクールな柚月だけど、こういう時は甘えん坊になって、柚月は辛いんだろうけど、いつにも増して可愛い。

いつも、こんな風に甘えてくれたらいいのにな、なんて考えながら柚月の頭をそっと撫でた。

早く良くなりますように。
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