私が恋を知る頃に
「穂海ちゃん」

そう声をかけると、穂海ちゃんは少し虚ろな目で俺を見る。

「また、怖い夢見ちゃった?」

鎮静剤のせいで、少し朦朧としているのか、穂海ちゃんは少し間を空けてから小さく頷いた。

「そっか、またいつも見る夢?」

………………コクン

「そっか、そっか。辛かったね。ごめんね、すぐ来れなくって…」

……………コクン

穂海ちゃんの目はずっと虚ろで、どこか遠くを見つめている。

明日はついに、警察が来る日。

この調子だと、少し…いや、かなり心配だけど大丈夫かな……

穂海ちゃんが辛い思いをせずに済むように…

ひたすら思考をめぐらせた。
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