私が恋を知る頃に
「穂海ちゃんっ」

碧琉先生の声がして、ハッと顔を上げる。

碧琉先生が駆けつけてきて、私の両手を包む。

「穂海ちゃん、ゆっくり息して。」

そう言われて、自分が呼吸をしてなかったことに気付く。

「ヒッ……ハアッ、ハアッ…」

「大丈夫、大丈夫。ゆっくりでいいよ。ゆっくり、ゆっくり。」

抱きしめられて背中をポンポンと撫でられ、涙を拭かれる。

「ヒック…ハァ…ハァ…………」

「そう。上手上手。その調子だよ。」

「ヒック、ヒック……ハァ…」

「上手、上手。大丈夫だよ。もう大丈夫。怖かったね。」

コクン…コクン……

怖かった、本当に怖かった

トラウマを思い出したこともそうだけど、パニックで息が吸えなくて、苦しくて、死んじゃうんじゃないかって怖くて…

やっと、息がある程度できるようになって、安心したのか、堰を切ったように涙と嗚咽が溢れだしてきた。

「うっ、こわ…かったぁ……」

「うん。うん。怖かったね。よく踏ん張ったね。偉かったよ。」

私は涙が溢れて止まらなかった。
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