私が恋を知る頃に
入れ替わりに警察が入ってくる。

やっぱり、体は強ばるけどゆっくり息をすることで自分を保とうとする。

「先程は、怖がらせてしまったようで申し訳ありませんでした。…話を続けても良いですか?」

……コクン

「ありがとうございます。では、確認も込めてもう一度聞かせていただきますね。」

お母さんや男の人の名前、日付を合ってるか聞かれ、小さく頷く。

「ありがとうございます、では、その日何があったのか詳しく教えて貰っても良いでしょうか?」

…コクン

私は、できるだけ思い出さないように注意しながら、口を開く。

「あ、あの日…………そ、その…堂坂さんとお母さん……が帰ってきて…」

"お前がなつみのアクセサリーを盗んだんだろ"

違う、そんなことしてない…

「私がっ…………お母さんのアクセサリー盗んだって…言われて……」

怒鳴り声を思い出してしまったせいで、息が少し苦しくなる。

「盗んだんですか?」

「ち、違っ……私は、盗んでないっ!!」

確認のためだとはわかっていても、疑われ、また酷いことをされるのではないか…と体は勝手に震え出す。

「わ、私はっ、何もしてないのにっ、ヒック……本当にっ、盗んで、ない、のにっ…」

過呼吸だ…

ゆっくり息を吐かなきゃ、冷静に、冷静に……

目をつぶり、ゆっくり呼吸をすることに集中する…

「ふぅ……ヒック…ヒック…………ふぅ…ふぅ……」

「すみません、嫌な言い方しましたね。確認のためだったんです、ごめんなさい。」

…コクン

だいぶ呼吸が落ち着いて、震えが収まってくる。

「………そ、それから…」

たくさん殴られて、蹴られて、踏みつけられて…最後には、お風呂場に連れていかれて、体を縛られ、動けなくて……そのまま水を出された

それを伝えると、警察は少し驚いたような表情をしてから、何かメモをとった。

「そうですか、その後のことは覚えていますか?」

力なく首を振る。

大丈夫、大丈夫と言い聞かせても、その時のことを少しでも思い出すと、どうしても涙が溢れて体が震えた。

限界までお腹は空いてて、ただでさえフラフラだったのに沢山痛いことされて、怒鳴りつけられて、挙句真冬のお風呂で冷水に沈められた。

苦しくて、痛くて、とても怖かったのを覚えている。

息が苦しい…

どう頑張っても、あの時のことを思い出すとダメみたいだ、自分で体の制御が効かなくなる。

先生、呼ばなきゃ…

苦しい、苦しい……

震える手で、力を入れてボタンを押した

すぐに電話は碧琉先生に繋がる。

「せ、んせ…」

言い切る前に、部屋のドアがノックされた。
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