はっぴぃday
とっさに笑顔を作り

「いらっしゃいませ」

とどうにか声を絞り出す。

彼の顔を見て、少しずつ冷えていた手足に体温が戻り出す。

いつもはまっすぐいつもの席に座る彼が、私の目の前まで歩いてきて立ち止まり、じっと私を見下ろしていた。

「大丈夫?
顔色が悪い…元気ないし…」

すっと伸びた手が頬に触れかかり、彼がハッとしてその手を下ろしてぐっと拳を握った。

私からふいに外された視線は、手元の紙袋とフライヤーにうつり

「black mist。
好きなの?」

微かな笑顔を浮かべてまた私に目を合わせた。

「あっ…。
えっと、知り合いが好きで」

初めてまともに会話する目の前の彼に驚き、曖昧な返事をかえすと

「そうなんだ。
…いいよすごく。

来月ライブあるよね。
俺も行くんだ。

CD聞いて良かったら行ってみるといいよ。
楽しめるから」

そう言った彼が優しく微笑み、そのままいつもの席に座った。

動揺していた心がゆっくりと落ち着きを取り戻し、ズキズキ痛かった頭の痛みも彼の笑顔で和らいできた。

彼は私の癒し…。

゙くろちゃんと初会話!!
  はっぴぃday!"

手帳の今日の日付の欄にはそう書き記された。



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