・MINT
MINT


 木々の間から太陽の眩しい光が差し込み、思わず手をかざす。
その眩しさに一瞬目が眩み、足が縺れた。


「大丈夫ですか」


 ふらついた身体を、すぐに受け止めてくれた声の主は、そのまま私を歩道脇へと連れて行ってくれた。
 少し高めに設置されている花壇の縁に腰を下ろす。


 おかしいなぁ。去年までは、こんな日差しの中を一日中歩きっぱなしでも、支障などなかったのに。


 岩永充希(いわながみつき)二十八歳。独身。製菓会社『モリモト』勤務。
 さすがに二十代だと言っても、ほぼ三十路に片足を突っ込んでいる私の体力は、確実に衰えてきているのかもしれない。


「岩永さん、少し休んでから次の店舗に向かいましょう」


 私を気にかけてくれているのは、高木龍臣(たかぎたつおみ)二十五歳。高木君が入社以来、私が教育係をしながらコンビを組んでいる後輩だ。

 今日は高木君と一緒に、我社の商品を卸している店舗に挨拶回りしていた。


「大丈夫よ。先方にも伺う時間を指定しちゃってるんだから、遅れるわけにはいかないって」


 座っていた花壇の縁から立ち上がろうとした私の両肩を、高木君はグッと押さえ付けた。
 高木君の力加減に反発するだけの力も無く、そのまま座らされてしまう。
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