・MINT
否応なしに私の心は高木君に向いてしまう。その笑顔を独り占めしたくなってしまっている私は、先輩として失格だよね。
社に戻ったら、高木君とのコンビを解消してもらえる様に、上司に相談しよう。
さっきの店舗店長からのお墨付きだ。もう高木君に私は必要ない。
「岩永さん、聞いてた? 何か他のこと考えてただろ」
「ん? あっ、ごめん。……って、ほらまた! なんで馴れ馴れしくタメ口なのよ」
動揺を隠したくて、高木君の背中をバシッと叩くと。ワザとらしく痛がりながらも、何故か高木君は嬉しそうに笑っていた。
こんな風に二人で店舗回りをするのも、最後かもしれない。そう思うと、なんだか無性に寂しい。
社に戻るため、バスに乗り込む。
一番後ろのシートに並んで座り、資料に目を通していると。
コツン。と左の肩に、高木君の頭が乗ってきた。
「高木君?」
寝ちゃってる。午前中から一日中店舗回りだったし、疲れちゃったのかな。
こんなに無防備に寝られてしまうと、無理やり起こすのも可哀相になってしまい。暫く肩を貸すことにした。
とはいえ、気持ちが落ち着かない。資料に目を通していても、ちっとも頭に入らなくて。時折、耳に聞こえてくる高木君の寝息にドキドキしてしまっている。