・MINT


 毎朝、目覚めた時に感じる身体と気分の不調に、気付かなかったわけではない。薄々気づいていたけれど、私的なことで仕事を休むなんてことは、私には考えられなくて。
 軽い頭痛を感じながらも、薬を服用し。自分自身を騙しながら出社していた。

 今日まで、誰にも気づかれていないと思っていたのに。


「岩永さん、今からでも社に戻って下さい。残りの一店舗は、俺が行ってきますから」


 高木君は立ちあがると、ガードレール越しにタクシーを停めるため、身を乗り出し手を挙げた。


「いいってば。ホントに大丈夫だから」

「よくないです」


 日中とはいえ、なかなかタクシーが拾えない。目の前を通過して行く車を見送りながら、苛立ちを隠せない高木君の腕を掴む。


「高木君、タクシーよりお水買って来てくれないかな」

「水ですか? 分かりました」


 待っていてください、と言い残し。高木君は目の前のコンビニへ走って行った。
 少し短気なところは、まだまだだけど。随分大人になったなぁ。なんて、呑気に高木君の姿を眺めながら思ってしまった。


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