・MINT
入社当初は、今よりもっと短気で。というより、学生気分が抜けていなくて。何でも自分中心に回っていると思っているような子で。
そんな高木君の教育係を任された時、真面目にお断りしたかったのが本音だ。
「お待たせしました。はい、水とアイス」
「アイス? 頼んでないよ?」
「いいから。体調悪い時に食べるアイスは、格別に美味いですから。黙って食べて!」
手際よく買って来たアイスのパッケージを開き、取り出し易い様に開け口をこちらに向けられた。
「はいはい、いただきます。……美味しい」
根気よく指導し、教育した甲斐があったのかな。なんて、自分自身を褒めてあげたいな。
こうして、頼んだこと以外も気を利かせてくれるような社会人に育てたのは、私だもん。
高木君の評判もいいし。こんな気遣いも、仕事以外に活かされているみたいだから。大人の男性として、イイ男に育てたのも私だと断言してもいいと思うな。
「一口下さい」
「あ!」
持っていたアイスをパクッと横取りされてしまった。「うん、やっぱ美味い」と美味しそうにアイスを頬張っている高木君は、私の食べかけを口にしたことを気にもしていないみたい。