・MINT
視線は高木君を捉えたまま。気付いてしまったこの想いを、どうしていいのか分からなくなり、今度は意味も無く下を向く。
そんな妙な動きをした私を、変だと思ったのは高木君だろう。
「ちょっと。ホントに大丈夫か?」
「見ないで」
「岩永さん?」
「……見ないでって言ってるの」
まともに高木君の顔が見れなくなるほど、自分で自分の気持ちに戸惑っているなんて。
どうして今まで気付かなかったのだろう。
高木君を恋愛対象として見ていたなんて、冷静に考えれば、自分でも気持ち悪いって思うのに。
頭を抱えていると、高木君の手が乗り。優しく撫でられた。
優しくて温かくて。胸が苦しくなる。
「どうして頭、撫でてるの?」
「撫でてあげたくなったから。ダメ?」
「ダメ」
そんなことされたら、気が付いてしまった気持ちを隠すことが出来なくなりそうだから。
高木君にとって、何でもないことでも。私には何でもないこと等と思えなくて。
思わせぶりなことなど、しないでほしい。
顔を上げると、目の前には私を心配そうに覗き込んでいる高木君が居て。
目と目が合った瞬間、私の中で何かが弾けた。
あ、ダメだ。私、完全に落ちてる。