成瀬くんなんて大嫌い。
あ、そうなんですね…。


「どうすればなおるかな?」


私が真剣に聞き返すと、監督は


「んんー、」


と唸っていた。


「そのやってるシーンをさ、自分に置き換えてみて、気持ちを想像するんだよ。」


…成瀬くん!


「置き換える?」


「んー、例えばね?俺と瀬戸川ちゃんの最後のシーン。瀬戸川ちゃんは目が覚めたら大好きな王子様がいるわけでしょ?だから、俺の事、好きな人だと思ってやってみるとか。」


「すっ、すきなひとっ!?」


ややや、待って待って、


好きな人…成瀬くんだし。


一緒に劇やってる本人だし…!!!


…でも、そうか。


その劇の中では、成瀬くんは私だけのものなんだよね。


劇の中では、私が好きって言ったら、受け止めて、返してくれるような関係なんだ。


だったら、しっかり゛好き ゛を伝えればいいんだ。


「なんか、できるかも…!!もう1回最後のシーン、やってもいい?」


「「いいよ」」


みんな優しいな


快くOKしてくれた。


「じゃあ成瀬、瀬戸川さん準備して〜いくよー」


監督の指示で再び演技が再開する。
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