成瀬くんなんて大嫌い。
絶対に、負けたくない!


「じゃあ、今日から瀬戸川さんと一緒に転校生ちゃんも練習来てね」


「はぁーいっ!」


自分のワガママが通ったことが嬉しいのか、愛音ちゃんは嬉しそうに成瀬くんの腕に絡みついた。


…やだよ、成瀬くん。


…これ以上は、愛音ちゃんのやりたいようにはさせない!!


私がお姫様役を勝ち取らなくちゃ…!


絶対、譲りたくない。


そう決意した私は授業中もずっと劇のことを考えていた。


そして、放課後。


「陽茉莉ちゃ〜ん、練習だよぉ?いこお?」


…わ、でた、愛音ちゃん…


「う、うん」


教室から出て、ほかの人がいなくなると、愛音ちゃんは私の耳元で、


「樹の相手は愛音だから。あんたなんかに務まるわけないでしょ?」


なんて言って鼻で笑った。


あぁぁ、やっぱり私、愛音ちゃん無理だよ…


こんな子と一緒にこれから練習するなんて…


でも、動揺しているのを悟られたら相手の思うつぼだと思った私は、「あ、そう」なんて、必死の強がりで愛音ちゃんを置いて体育館にむかった。


私やっぱり性格悪いな〜


なんて、自分の腹黒さを自覚しながら。
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