成瀬くんなんて大嫌い。
私が体育館に着くと、既に大体のメンバーは揃っていた。


「あ、遅かった?ごめんね!」


「「大丈夫だよー」」


私が謝ると快く許してくれるみんな。


やっぱり私このメンバーで劇したいよ。


愛音ちゃんじゃ、いやだよ。


「瀬戸川ちゃん〜」


心がほっこりして、暖まっていると、急に成瀬くんに呼ばれた。


「なに?成瀬くん」


「…やめちゃうの?お姫様役」


「え?」


やめる?私が?お姫様役を?


「だってさっき…愛音に譲ろうとしてたでしょ?」


「や、あれは違くて…」


「ほんと?やめない?」


「う、うん、やめないよ!だってここまで練習してきたし、最後まで、やりたいって思うから!」


私のその言葉を聞いて嬉しそうに笑う成瀬くん。


…っ、かっこいい


ってかなんでそんな嬉しそうなわけ?


「なんで成瀬くんは愛音ちゃんがお姫様役やるのダメって言ったの?」


「え?」


「彼女さんじゃないの?だったら、私より愛音ちゃんが、お姫様役の方がいいんじゃ…?」


さっきまで抱えていたもやもやを一気に吐き出すと、成瀬くんはとても不思議そうな顔をした。
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