成瀬くんなんて大嫌い。
「陽茉莉、隣成瀬くんじゃん、大丈夫?」


私が成瀬くんを好きだった…(うん、あくまでも過去形!)ことを知っている梨花が心配して声をかけてくれた。


「ぜんぜんへーき!」


梨花に向けてピースサインをして見せた。


第一、私からは話しかけないし。


あっちだって、話しかけてこないだろうし。


きっと、成瀬くんは一年前私と話したことなんて覚えてないだろうから。


成瀬くんにとっては、私も、沢山いる女の子の中の1人だから。


嫌だなぁ…。私はこんなに覚えてるのに。


こんなにずっと引きずってるのに。


成瀬くんはなんとも思ってないどころか、覚えてない、なんて。


どうして世の中ってこんなに不公平なんだろう。


私がこんなに成瀬くんでいっぱいで、苦しくて悔しいみたいに、成瀬くんも私でいっぱいになって、苦しんで、悩めばいいのに。


なんて。


…私は成瀬くんが嫌いなんだから、


もう、必要以上彼のことを考えるのはやめよう。


もう傷つくのはごめんだ。
< 8 / 73 >

この作品をシェア

pagetop