黒と白の羽
「リール?俺は逃げないよ・・・助けに来たんだから逃げるのは嫌だからな」


両掌を打ち合わせた。



乾いた柏手の音は風に掻き消される事無く清澄に響き渡る。



合わせた掌を引き離すと、掌の間を蒼い水の線がつないだ。



鈴羅はソレを右手で引き抜くように横薙ぎに振るう。


一気に片付けると、決意を込めて。



瞳が蒼く染まっていく。


「【水月】召喚!」



水月は神殿の隙間から入る光で艶やかに光っていた。



「出て来い・・・魔族居るんだろ?」



私の声に、神殿の影から男が出てきた。



背中に黒い羽。黒い髪、黒い瞳・・・童話の中に居る悪魔と同じだった。



「コレはコレは・・・闇姫・・・貴女はこちら側では?」



「・・・俺はそっちじゃねぇし、俺は闇姫じゃねぇよ!」



私は男に斬りかかった。



「おや?黒い髪に黒い瞳のはずですが?」


「ダレだ?お前は・・・確かに俺は黒髪に黒い瞳。でもそれは右目だけだ。」


休みを与えずに斬りかかって行く。


「私ですか?私はローグ。本当ですね・・・黒いのは右だけだ・・・」


{何故}その言葉が私の脳裏で幾度と繰り返されていた。


{何故}、コイツは私の瞳の色が分かる?

{何故}、瞳の色が蒼に染まっているのに?

{何故}、コイツはリールを殺そうとしている?

{何故}――私はここまで本気になっている?





《鈴羅side終了》
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