訳あり無表情少女と一途な幼馴染
楼side
栞が蓮を覚えてない
最初は、久し振りに聞いた名前だから忘れてるだけかと思ったが
違った
検査の結果、記憶喪失だと判明した
しかも、蓮の事だけだ
医者は、何かキッカケがあれば、ふと思い出す可能性があると
まあ、徐々に思い出せればいいか
でも…

「あと数日で退院出来るみたいだ」
「うん。そういえば、退院した後はどこに行けばいいかな?」
「? あの家に戻ればいいんじゃねぇか?」
「あそこには紫音が居るでしょ?」
「それがどうした?」
「私、奴等から逃げてきたの。もし見つかれば紫音が危ない
だから、あの家には戻れない」
「なら、俺が手配しとく」
「楼?」
「俺が手配して、お前の力でカモフラージュすれば問題無ぇだろ」
「じゃあお願いしようかな」
「おう」
「じゃあ、紫音には会わないのか?」
「…うん。会いたいけど、今は会えない。だから、絶対に私の事は言わないで」
「おう」
「分かった」
「それと楼」
「ん?」
「組の事をやる時は、何て呼べばいい?桜井さん?」
「そうだな、それがいいか。でも…それ以外の時は、楼でいい」
「分かった」

あっという間に時間は過ぎ、栞が疲れて寝た後、俺と和士は帰路に着く

「和士」
「何だ?」
「栞の事は、蓮は勿論…紫音にも言うな」
「紫音にもか…辛いな」
「だが、これが一番安全だ。アイツ等が傷付かない為に…」
「そうだな」
「退院日までに家はなんとかしとく
お前にも色々としてもらうからな、頼むぞ」
「おう、任せとけ」

ーー
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