俺様上司が甘すぎるケモノに豹変!?~愛の巣から抜け出せません~
 
(ほんと……努力だけじゃどうにもならないなあ、この世界)

明らかに私のせいで足を引っ張ってしまったことが心苦しくて、申し訳なさでうつむいた顔があげられない。

他のメンバーはもう一台のタクシーに分乗したり、別の打ち合わせ先に直行したりしたので、車内は周防さんとふたりだけだ。

(きっと周防さんも呆れてるだろうな)

そう思ってますます気持ちが沈みかけたとき、コツンと隣から軽く頭を小突かれた。

「ちげーよ。俺の作戦ミスだ。今回ターゲット層が分かりやすかった分、他の競合相手とアプローチの仕方が被ってたのかもしれないな。似たようなコンテが集まって辟易してたんだろ」

周防さんはこちらを見ず、前を向いたままそう言った。

てっきり呆れられて罵倒のひとつでもされるかと思ったのに。自省で冷たい石みたいになっていた私の心が、少しだけほぐれる。

(もしかして、私がひとりで抱え込まないように気を遣ってくれたのかな……って、違うか。仕事にそんな甘っちょろい考え持ち込む人じゃないしね)

それはそれで、自分を省みることができる素直さは尊敬に値する。いかにもプライド高くて反省なんかしなさそうなのに。
 
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