俺様上司が甘すぎるケモノに豹変!?~愛の巣から抜け出せません~
「お……お待たせしました……!」
「遅い」
駆けつけた私を見て、周防さんは労うでもなく居丈高に言った。せっかく走ってきて遅刻しなかったのに、結局怒られるのだからやりきれない。
しかもメイク直す暇もなかったし、汗びっしょりだし、今日のプレゼンのために張り切って履いてきたハイヒールで走ったせいで足が痛いしで最悪だ。
すでに疲労困憊気味になりながら席に座ろうとした私は、改めてとあることに気づく。
「……あれ?」
四人掛けのテーブルには周防さんひとりしかおらず、チームの他のメンバーは誰もいなかった。
「まだ他の人来てないんですか? っていうかここじゃ狭くありません? 移動するかテーブルくっつけます?」
店内を見回すけれど、特に混んでいるようでもない。店員さんに言えばもっと広い席に移してもらえそうだ。
ところが周防さんは、「座れ」と言わんばかりに自分の向かいの席を指さすと、驚くことを言い出した。
「いいんだよ、ここで。俺とお前しかいないんだから」
「は……はい!?」
『なんで!? めっちゃ嫌です!』とあやうく叫びそうになったのを、慌てて呑み込んでこらえる。
けれど顔に出るのは抑えきれなかった。うっかり苦々しい表情を浮かべてしまい、周防さんの眉間にしわが一本刻まれる。