俺様上司が甘すぎるケモノに豹変!?~愛の巣から抜け出せません~
いくら惚れ薬のせいとはいえ、璃々の元カレと付き合って同棲までしているだなんて。自分がとんでもない身の程知らずに思えてきた。しかも――。
「ほら、こないだ覚せい剤で捕まって急遽ポスターのモデルが差し替えになった件あったじゃん。あれ、璃々と同じ事務所の奴だったんだよ。で、そのとき代わりのモデルに別の売れっ子タレントを手配するように事務所に言ったのが、璃々だったって噂だぜ。璃々がまだ周防さんのこと好きで、事務所に頼み込んだらしいよ。そんで、それがきっかけで最近復縁したとか」
「そ……そ、そうなんですか……」
声がひっくり返りそうになるのを必死にこらえて、私はぎこちなく相槌を打つ。『復縁って何!? 現在進行形で私、周防さんと付き合ってるんですけど!』」と全力で詰め寄りたい気持ちをグッとこらえて。
いくらなんでも復縁はないと思う……たぶん。同じ屋根の下で暮らして同じ会社に勤めているのだ。いくら私でもあからさまな二股くらいは気がつくと思う……たぶん。
けど、例のポスターのモデル差し替えの件はものすごくしっくりきてしまった。
あのとき事務所が用意した差し替えのモデルはかなりの人気タレントだった。おそらくほかのスケジュールより優先して、うちの撮影をさせてくれたと思われる。いくら自社のタレントの不祥事のお詫びとはいえ、容易なことではない。
けれど事務所の中でもトップ人気を誇る璃々が一生懸命に頼み込んだなら、それくらいの便宜は図ってもらえるかもしれない。
(ってことは璃々が今でも周防さんをめっちゃ好きってこと? つまり私のライバルが璃々ってこと? ……無理すぎない?)
まだ確定したわけではないものの、可能性の高い現状を理解して意識が遠のきそうになる。なんだこのハードモード。