俺様上司が甘すぎるケモノに豹変!?~愛の巣から抜け出せません~
 
いうまでもなく璃々は美人だ。ピュアなイメージにピッタリの清楚系美女で、スタイルも良くモデル並みの小顔なのも人気の秘密だ。透明感のある歌声は本当に素晴らしくて、彼女が歌い上げるラブソングは魔法が込められているんじゃないかと思うほど切なく胸に訴えてくる。

そんな女神みたいな人を相手に、いったい私の何が勝てるというのだろうか。

今は惚れ薬が効いているけれど、解けた瞬間に勝敗がどうなるかなんて火を見るより明らかだ。

(璃々が元カノ……しかも璃々は今でも周防さんのことが好き……)

ものすごく衝撃的な情報の数々にめまいがしてくる。

「ほんと、周防さんの人脈すげーよ。あの人の力だけで大手に張り合えるもんな」

「ソウデスネースゴイデスネー」

もはや魂が半分抜けかけている私は心のこもっていない相槌をテキトーに打つと、愛想笑いの仮面を顔に貼りつけながらその場を去った。



(駄目だ……全っ然集中できない)

窓の外も薄暗くなりかけている午後四時過ぎ。私は人のなるべくいないワークスペースでひとり、デスクに向かって頭を抱えていた。

目の前にあるのはマインドマップの紙。午後のブレストを経て自分なりにイメージを整理しようと思ったのだけれど、気がつけば用紙には『元カノ』『シンガー』『清純』『復縁』など、商品のイメージからは程遠い単語が枝を伸ばしてしまっている。
 
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