俺様上司が甘すぎるケモノに豹変!?~愛の巣から抜け出せません~
 
「シニア向けおせんべいをどう分析したら『元カノ』に繋がるんだっての……」

我ながらなんて集中力のなさだと呆れたとき、部屋にひとりの男性が入ってくるのが見えた。

「あ……、小宮山さん!」

集中するためにつけていたヘッドホンを外し、椅子から立ち上がって彼に向って軽く頭を下げる。

するとこちらに気がついた小宮山さんも軽く頭を下げながら、私の方に向かってきた。

「こんにちは、梓希さん。今……大丈夫? 集中してる?」

デスクの上に広げたマインドマップの用紙を見て、小宮山さんが遠慮がちに尋ねる。

「大丈夫です、全然集中してません」

苦笑しながら即答すれば、小宮山さんは眉尻を下げて微笑み「そういうときもあるよね」と肩を竦めた。

辺りを見回し他に人がいないことを確かめてから、小宮山さんは少し声を潜めて話しだした。

「この間はごめんね。困らせるような頼み事しちゃって」

「い、いえ! 私の方こそお力になれなくてごめんなさい」

ヌードモデルの話はあれから電話で正式にお断りした。

彼にとって重大な頼み事だったと思うのに、それをお断りしても怒らないどころかこうしてフォローまでしてくれるなんて、本当に小宮山さんはいい人すぎる。
 
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