俺様上司が甘すぎるケモノに豹変!?~愛の巣から抜け出せません~
「まあ、その……ちょっとだけ……。で、でも、芸術だって理解してくれたし、それに周防さんに反対されたからヌードモデルを引き受けなかったわけじゃないです! 私が、その……勇気がなかっただけで……」
周防さんのせいでヌードモデルを断ったと思われたら嫌だなと思い焦って言い訳すると、小宮山さんはさらにおかしそうにクスクスと肩を揺らし、「大丈夫だよ、分かってるから」と言ってくれた。
「けど、そっかあ。ちょっと残念だな。僕も梓希さんのこと気になってたから」
何気ない会話のように小宮山さんがサラリと発言した内容に、私は「え?」と言ったまま一瞬固まる。
そして少しはにかみながらも彼が瞳に蠱惑の色を浮かべたのを見て、私はその意味を理解し一瞬で頭が沸騰した。
「……っ、す、すみませんでした……」
どうして謝っているのか自分でも分からないけれど、適切な言葉を考える余地などない。頭の中は「なんで?」「どうして?」のオンパレードで、おでこや手のひらにジワジワと汗まで滲んできた。
「謝ることないのに。梓希さんってやっぱりかわいらしい人だね」
追い打ちをかけるようなことを言われて、恥ずかしさと気まずさと動揺から逃げ出したくなった私は、ぎこちなさすぎる笑顔を浮かべて「そういえば今日は打ち合わせに来たんですか?」と全力で話を逸らす。
すると小宮山さんは特に表情を変えることもないまま、「うん。S区の夏祭りのポスターのことで、東條さんと」とフツーに答えた。