俺様上司が甘すぎるケモノに豹変!?~愛の巣から抜け出せません~
 
『寂しい』だなんて、不意打ちでそんないじらしいことを言われて胸がキューンと締めつけられる。普段めちゃくちゃ気が強いくせに、そんなかわいい一面見せるなんて反則だ。

思わず帰省を取り消したくなるけれど、それでは実家に強制的に連れ戻される結果になってしまうので出来ない。

「ご、ごめんなさい……。私も周防さんと一緒に除夜の鐘聞きたかったけど……」

実に残念だと思いながら肩を竦めると、周防さんはニッと歯を見せて笑い「じゃあ来年な」と明るく言った。

「まあ年越しは駄目でもクリスマスあるしな。俺、二十四日はわりと早くあがれそうなんだけど、お前は?」

「多分大丈夫……調整できると思います」

「じゃあデートするか。ベタだけどイルミネーション見てうまいもんでも食いにいこうぜ」

恋人同士なら当然のことかもしれないけれど、私にはその約束がすごくすごく嬉しくて。だからこそ――。

(璃々とも、そんなふうにクリスマスを過ごしたことあるのかな)

そんな馬鹿なことが一瞬頭をよぎってしまうことが、悲しい。

「ん? 嫌か? なんかもっとテーマパークとかフェスとか盛り上がるやつの方がいいか?」

「い、いえ。全然。イルミネーションと食事がいいです」

わずかに曇ってしまった表情を見逃さずに、周防さんはすぐに気遣ってくれる。

その優しさを嬉しく思いながらも、作り笑いすら上手にできない恋愛下手な自分が情けなくて泣きたくなった。
 
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