俺様上司が甘すぎるケモノに豹変!?~愛の巣から抜け出せません~
「梓希さんとは九月からお付き合いを始め、先月より私のマンションで一緒に暮らしております。本来なら暮らし始める前にご挨拶に伺いご両親のお許しを得るべきところを、私の不徳の致すところにより、このような形での報告になってしまったことをお詫び申し上げます」
「あらまあ。いいのよう、そんなに謝らなくて。同じ会社の方でしょう? お仕事が忙しかったのよねえ」
再び深々と頭を下げた周防さんに、母は明るくフォローを入れてくれるけれど、父の怒りはまったく治まっている様子がない。
「気に入らん。そげんのは言い訳や。俺は筋を通さん男は好かん」
とりつくしまのない状態の父に、今度は私が焦って口を開く。
「ち、違うの、お父さん! 周防さんは私が風邪で倒れちゃったときに、ずっと自宅で看病してくれたの。それで、私の健康状態が心配だからって一緒に住んでくれることになって……。お正月には一緒に報告にも行こうって言ってたんだよ」
お正月についてはちょっとフェイクを混ぜたけれど、あとは本当のことだ。
もとはといえば、私の自己管理を心配してくれて始まった同棲なのだ。本気で心配してくれた周防さんの優しさを、分かってほしい。
「あらあら、この子は倒れたことも親に言わないで。まったく。ごめんなさいね、周防さん。ずいぶんご迷惑おかけしちゃったみたいで」
相変わらず母だけはマイペースだけれど、父は当然「そげんのは言い訳や」と聞く耳を持たない。
「周防さんと言いもしたね。梓希は私たちの可愛(む)ぜ娘です。そげな娘がひといで東京に出っちゆたとき、私たちがどれほど心配(せわ)したか、分かりますか? どげな理由を並べられても、あたが大事な娘をかどわかしたこち変わりはなか。こげなところに娘は置いちょけん。実家に連れ帰りもす」