俺様上司が甘すぎるケモノに豹変!?~愛の巣から抜け出せません~
ついに連れ帰る宣言をした父に、私は真っ青になって「待って! お父さん!」と叫ぶ。
――ところが。周防さんは冷静な態度を崩さないまま、父をまっすぐに見据えて言った。
「かどわかしてはおりません。私は本気で梓希さんを愛しています」
「口ではなんとでも言っがな。証拠はあっとか?」
「私は梓希さんと結婚を考えております」
一瞬部屋に沈黙が流れ、次の瞬間父と母と私の「えぇっ!?」という声が響き渡った。
「決して浮ついた気持ちで梓希さんと交際していたわけではありません。私は梓希さんを人生の伴侶にしたいと思っています。もし梓希さんを鹿児島へ連れ帰るというのでしたら、私も東京での仕事をやめ鹿児島まで追いかけます」
これにはさすがに父もポカーンとする。そしてそれ以上に、私は周防さんの横顔を見つめながらあっけに取られていた。
(け、け、け、結婚……!? 周防さんと、結婚……!?)
うっかり頭の中が薔薇色になりかけたけれど、そもそも惚れ薬のせいだったことを思い出して冷静になる。
けれどそれでも……周防さんが私のことをそこまで真剣に考えてくれていたことが嬉しい。嬉しすぎる。
「ど、どうせ嘘じゃろ! 口ではなんとでも言がなっ!」
父は明らかに動揺しているけれど、それでも簡単には納得しない。むしろ動揺したせいでムキになってしまっている。
「だいたい、お前みたいな軽薄そな東京男の言ことなんち、信じがならん! じゃっで俺は梓希を東京に出すのは反対じゃったんだ! こげな男に騙されおって!」