俺様上司が甘すぎるケモノに豹変!?~愛の巣から抜け出せません~
テーブルをドン!と叩いて言った父の言葉に、周防さんが口を開くより先に言葉を返したのは、私だった。
「軽薄って何よ! 周防さんのこと知りもせんよっで、勝手なこと言わんで!」
まさか私が強く言い返すと思っていなかったのだろう、父も周防さんも目を丸くしている。
私だってこんな頑固親父と口論するつもりはなかったけれど、周防さんのことを悪く言われるのは黙っていられなかった。
「せ……せからしか、お前は黙ってろ! 嫁入り前ん娘を傷もんにした男を軽薄ち呼んでないが悪か!」
「傷もんになんてなっちょらんもん! 私まだ処女だもん!」
ついヒートアップしてとんでもないことを口走ってしまったときには、もう遅かった。
唖然として固まっている父と母を前に、『ぎゃーー!!』と叫んで顔を覆って逃げ出したくなったけれど、もう言ってしまったものは仕方ないと腹を括る。
「す、周防さんはそういう人なの! 私のこと本当に大切に想ってくれてるから、私が嫌だって言ったら絶対手を出さないの! 私の心が決まるまで何ヶ月でも待ってくれるって約束したんだから!」
恥ずかしいのと、父に分かってほしいという気持ちが混ざり合って、なんだか涙が滲んでくる。半泣きになって必死に説得していると、母が「お父さん」と呼び掛けて、笑顔でポンと父の腕を叩いた。
「もういいじゃないですか。周防さんは梓希との結婚を望んでくださって、梓希も周防さんのことを好きで、何も問題ありませんよ。そりゃあ一緒に住む前にひとこと欲しかった気持ちはあるけれど、あくまで梓希の体調管理を気遣ってくださった結果だったんだから。そこは大目に見ましょうよ」
「……お母さん……」