俺様上司が甘すぎるケモノに豹変!?~愛の巣から抜け出せません~
まさかの母のお許しに、胸が思わず熱くなる。
いつもは父の意見を尊重する母がたしなめてきたことに、父は困惑したように口をモゴモゴとさせた。
「周防さん、お勤めは梓希と同じ会社かしら?」
「はい、梓希さんと同じ『しののめ広告』の営業部主任を務めております」
「ほら、感心な方じゃない。周防さんも梓希も、東京の広告会社なんて立派なところで頑張ってるのに、年寄りのわがままで無理やり連れ帰ってふたりの将来を台無しにするなんて。よくないわよ、ねえ」
母にそう咎められて、父は「じゃっどん……」と言いかけた後、口をへの字に引き結んで黙った。
最悪だった状況が好転しそうなこのチャンスを周防さんが逃すはずもなく、すぐさま頭を下げる。
「お約束します。絶対に梓希さんを悲しませるような真似はしないと。どうか梓希さんとの交際をお許しください」
私もその隣で「お父さん、お願い」と頭を下げれば、父は困ったように頭をガリガリと掻いてから口を開いた。
「周防さんち言たね。とりあえず正月に挨拶に来やんせ。そいかあ、結婚まで娘に手を出したや許さんぞ」
「はい!」
ついに陥落した父を見て、信じられないような喜びで胸がいっぱいになる。隣の周防さんと『やったー!』とハイタッチを交わしたいところだけど、それをしたら水の泡になりかねないので我慢する。