俺様上司が甘すぎるケモノに豹変!?~愛の巣から抜け出せません~
複雑な思いを抱えて胸に抱かれていると、ふいにクスクスと周防さんの体が揺れた。
「それにしても、お前の薩摩弁かわいかったなあ。初めて聞いたよ」
可笑しそうに笑う周防さんの顔を見上げて、私は「えっ」と驚いて抱きしめていた腕から抜け出した。
「わ、私、薩摩弁なんかしゃべってました?」
「言ってた、言ってた。『勝手なこと言わんで!』とか『なっちょらんもん!』とか。かわいいから普段からそうやってしゃべれよ」
夢中で父に反論していたから全然自覚がなかった。なんだかあまりに素の自分を見せてしまったような気がして、恥ずかしくなってくる。
「忘れてください……」
「なんでだよ。いいじゃん、薩摩弁。いつか子供が生まれたら教えてやれよ。バイリンガルな子に育てようぜ」
楽しそうに笑って未来を語るその姿に、私も微笑み返す。
いつかは泡のように消えてしまう恋だけれど、今だけは夢を見たい。
頬を撫でてくる彼の手のぬくもりときっとかなわない夢の余韻を、笑って心に刻みつけた。