俺様上司が甘すぎるケモノに豹変!?~愛の巣から抜け出せません~
体重は増えてしまったけれど、そのおかげで終始和やかな雰囲気だったのはありがたい。
父ももう頭ごなしに私たちの交際を反対することはなく、周防さんと焼酎を酌み交わしていたし、母と祖母にいたってはご機嫌で周防さんを大歓迎していたのだから。
両親と周防さんがいい関係になってくれたことにホッとした反面、私の心の奥では消しようのない不安も燻っていた。
惚れ薬の効果が解けたら、当然私たちの関係は解消される。
もはや周防さんが娘の夫になると信じて疑っていない両親は、そのときどれほど悲しむだろうか。
(いっそ……このまま薬の効果が解けない方がいいのかな)
一瞬そんなズルい考えがよぎって、慌てて頭をブルブルと振る。
そんなのは駄目だ。周防さんの本当の心で、スピリチュアルに頼らない私の力で、偽物じゃない恋をしなければ意味がないんだ。
薬が解けたって確実に破局すると決まったわけじゃない。周防さんだって普通の人間だもの、私の努力次第で好きになってくれる可能性は必ずある。前向きに努力するのみだ。
改めて早くシャーマン美鈴を見つけ出そうと気合を入れていると、隣に座った周防さんが隙をついて私の二の腕をプニプニと揉んできた。
「この揉み心地、たまらん……」
「や、やめてください! 痩せます! 絶対痩せますから!」
「無理しなくていいんだぞ。アイス食べるか?」
逃げようとする私を腕に抱きしめながら、周防さんは楽しそうにからかう。
本当にこの人はいじめっ子だなと思うけれど、嬉しくて顔が綻んでしまうのは止められず。私は、いつか薬が解けてもこんな幸福な関係を紡ぎ直せる日が来ることを願った。