俺様上司が甘すぎるケモノに豹変!?~愛の巣から抜け出せません~
「……っ、ど、どうして……っ」
涙腺が壊れたみたいに、ジャブジャブと涙があふれてくる。大粒の涙が目に幕を張って、目の前の周防さんの姿が見えない。
「なんでそんなことしたんですか! 私、真剣だったのに! 周防さんが死んじゃわないように必死だったのに! キスも同棲も初めてで、お父さんとお母さんにも挨拶してくれて、すごく嬉しかったのに! 私、本気で周防さんのこと好きになっちゃったのに! なんでこんな弄ぶようなことしたんですかあ!」
大声で叫んで泣いてしまったせいで、ますます周囲の注目を集めてしまったみたいだ。けれど、今の私にそんなことを気にしている余裕はない。
「周防さんの馬鹿! 意地悪! いじめっこ! ひとでなし! 女たらし! 大っ嫌い!!」
言うだけ言うと、私はクルリと踵を返して走り出した。どこへ向かっているか自分でも分からないけれど、これ以上周防さんの前にいたくなかったからやむを得ない。
うしろからは周防さんが「梓希!」と呼ぶ声が聞こえた気がしたけれど、空耳だと思うことにした。
気がつくと私はフラフラと会社へ戻ってきてしまっていた。
自分のアパートへ帰ればいいのだけれど、もしかしたら周防さんがアパートまで来る可能性を考えると、おとなしく帰る気にはなれなかった。
「……どうしようかな……」
今日顔を合わせるのを避けたところで、どうせ明日には会社で顔を合わせるのだ。逃げていても無駄なのだとは分かっているけれど、今はとにかく周防さんに会いたくなかった。