俺様上司が甘すぎるケモノに豹変!?~愛の巣から抜け出せません~
「えー! 惚れ薬が効いてるフリをしてたの!?」
和花ちゃんはお鍋からお豆腐と白菜と豚肉を銘々皿にとって、それを私に手渡しながら言った。
ホカホカの湯気がたつそれを受け取りながら、私は「うん」とまだ止まらない涙を零しながら頷く。
泣きやまない私を持て余した東條さんが連れてきてくれたのは、和花ちゃんが晩ご飯の支度をして待つ東條さんのマンションだった。
ふたりは多忙なとき以外はこうしてどちらかの部屋へ行き、晩ご飯を共にしているのだという。
私が和花ちゃんの親友だと知っていた東條さんは、泣いている私を彼女のもとへ連れていくのが賢明だと判断したらしい。
そしてそれは大正解で、アパートに帰れない私はいられる場所を得ただけでなく、心温まる食事と相談に乗ってくれる友人にありつけたのだ。
ラブラブな食卓にいきなり入り込んできたにもかかわらず、温かく迎えてくれた和花ちゃんと連れてきてくれた東條さんに心から感謝し、結婚式のご祝儀はめちゃくちゃ奮発しようと心に決めた私だった。
「たぶん……最初から全部分かってて演技してたみたい。キスも告白も全部、お芝居で嘘だったみたい」
改めて言葉にするとますます泣けてくる。私は熱々のお豆腐を口に運びながら、ポロポロと涙を零した。