俺様上司が甘すぎるケモノに豹変!?~愛の巣から抜け出せません~
「……どうして周防さん、そんなことしたのかなあ。お芝居してまで私のことからいたかったのかな。周防さんいじめっこだもんね。私が翻弄されてる姿見て、心の中で爆笑してたのかな」
ネガティブな私のつぶやきに、和花ちゃんと東條さんが顔を見合わせて小首を傾げる。そして和花ちゃんは「んーと」と悩まし気に眉根を寄せてから、改まって口を開いた。
「とりあえず、惚れ薬なんてものがインチキだったのはよかったじゃん。これでもう周防さんの命の心配する必要もないんだし。……で、じゃあなんで周防さんがお芝居なんかしてたかってことだけど。からかってたとか梓希を馬鹿にしてたとかではないと、私は思うよ」
そう言って和花ちゃんが「ね?」と首を傾げると、隣で東條さんも無言で頷いた。
「周防さんって確かにちょっと俺様だし、梓希のことからかって楽しんでるところもあるけど、でも人の心弄ぶような人でなしではないよね。って、そういうとこは梓希が一番よく分かってるんじゃない?」
「……うん」
和花ちゃんの言う通りだ。けれど、それなら彼の目的はなんだったのだろうか。
「じゃあ何かやむにやまれない事情があったのかな。誰かに弱みを握られて私に接近しなくちゃならなかったとか……」
「いやいや、もっと率直に考えようよ。つまり、周防さんはもともと梓希のことが好きだったって考えるのが、一番可能性が高いと思うけど?」
とんでもない彼女の考えに、私は一瞬涙も引っ込んで「ないないない」と苦笑いを零す。
「それだけはないよ。だって周防さんだよ? 惚れ薬飲む前の周防さんの態度知ってる? あの人、私のこと『大福』って呼んでたうえに、事あるごとに頭小突いてきたからね。すぐに馬鹿馬鹿連呼するし、常に上から目線の命令口調だし、仕事の駄目出しエグいし」