俺様上司が甘すぎるケモノに豹変!?~愛の巣から抜け出せません~
――そして十分後。
東條さんは私の状況を分析し、問題点を指摘し、解決策を構築し、それを実現するための方法まで見事提示して見せた。
「多角的な視点からも周防はもともときみに好意を持っていたと考えられ、それを明らかにするには本人に確認するという手段が、時間的にも精神的にも一番コストがかからないだろう。そしてきみが憂慮する『好意以外の理由が明らかになり、きみが傷つく事態になったら』という問題点は、俺と和花が慰めて励ますという保証でリスク軽減をはかろう」
「な、なるほど……」
なんだか仕事をしているような錯覚に陥ったけれど、ロジカルに自分のことを見つめ直せたせいで、ものすごく納得ができた。感情が先走って混乱していたけれど、悲観的な考えは全部私の憶測でしかない。真実を本人に聞かない限り、私の暗い憶測は永遠に晴れないのだ。
おかげでようやく周防さんと向き合う勇気が持てた私は、改めてふたりに深くお礼を述べた。
「ありがとうございます、東條さん。それに和花ちゃん。私、ちゃんと周防さんと話し合ってくる」
それによくよく考えたら、惚れ薬が効いていなかったことは喜ぶべきことなのだ。嘘の恋から解放された今、私と周防さんはようやく本音で話せるのだから。
さっきのしょぼくれた雰囲気からやっと立ち直った私に、和花ちゃんは「よし! 頑張って!」と笑って、グラスにビールを注いでくれる。
「椛田さんの成功を祈って」
東條さんがとった音頭に、三人で「乾杯」とグラスをぶつけ合った。