俺様上司が甘すぎるケモノに豹変!?~愛の巣から抜け出せません~
 
そう言って自分のカップを置き、浴室へ向かおうとした私に、「なあ、梓希」と周防さんが呼びかける。

やっぱりいいって言うのかなと思って振り返ったけれど、彼はカップで手を温めながらにっこり笑ってとんでもないことを言いだした。

「一緒に入ろうぜ」

「は……はぁ!?」

驚いて目を見開いていると周防さんは軽やかに立ち上がり、私の横を通り過ぎてバスルームへ行ってしまう。

そして自分でさっさとお湯を張る準備をして戻ってくると、「なんか入浴剤あるか?」とご機嫌そうに私に尋ねた。

「洗面所の棚に……って、そうじゃなく! い、一緒にってなんですか!?」

「一緒には一緒にだよ。バスタブ小さいけど、まあふたりで入れないこともないだろ」

「で、で、でも! その……け、結婚まではそういうことしないってお父さんと約束したし……」

動揺と恥ずかしさでごにょごにょと口ごもってしまう。

でも考えてみたら、私は今まで惚れ薬が効いていたと思っていたから周防さんと最後の一線を越えるのをためらっていたんだ。嘘の恋じゃなく、ちゃんと彼が本当の気持ちで私を好きになってから結ばれたいって。

でも……惚れ薬の効果が本当はなかったと判明した今、それはクリアしたってことなのかな? でも、お父さんは結婚まで手を出すなって周防さんに言ってたし、周防さんもそれに『約束します』って返していたような……。でも普通そんなの守らない? 方便?
 
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