俺様上司が甘すぎるケモノに豹変!?~愛の巣から抜け出せません~
すっかり俯いてしまっていると、「顔上げろって」と顎を掬われた。
目を見るのもなんだか恥ずかしくて思わず顔を背けそうになったけれど、周防さんは真面目な顔をしていたので私もちゃんと前を向くことにした。
「まだお前に話しておきたいことがある」
「あ……」
彼が何を話そうとしているのかはすぐに分かった。まだスッキリしていない問題が残っている。それは……。
「璃々のこと。誤解したまんまだろ」
そうなのだ。周防さんが昨夜、璃々さんとひと晩一緒だったことの真相はまだ明らかになっていないのだ。
周防さんは誤解だと言うけれど、正直聞くのが少し怖い。だって璃々が元カノであることには変わりないし、その元カノとの間で何かあったことは明らかなんだから。
渋い顔をしながらも視線を逸らさないで小さく頷くと、周防さんはため息をついて湿気に濡れた前髪をうっとおしそうに掻きあげてから話し始めた。
「お前が言ってた通り、璃々は元カノだよ。六年前、まだ俺が新人だった頃に付き合ってた。ただ、まあ……お互い若すぎて半年で駄目になったけどな。璃々はあの通り感情の起伏が激しいうえデビューしたばっかりでピリピリしてたし、俺は俺で仕事に手いっぱいで璃々を支えてやる余裕もなかった。今では悪かったなと思うけど、あのときはあのときなりに精いっぱいだったんだからどうしようもないよな」
もう六年も前の話だというのに、やっぱり嫉妬心が湧いてきてしまう私は狭量だろうか。せっかく周防さんが包み隠さず話してくれているというのに、顔が勝手にどんどん拗ねたものになってしまう。