俺様上司が甘すぎるケモノに豹変!?~愛の巣から抜け出せません~
 
「じゃあ昨日の夜、帰ってこなかったのも?」

そう質問すると、周防さんは「あんなの脅迫だぜ、まったく……」と呟いて、疲れがぶり返したようにガックリと項垂れた。

「アイツ、俺がヨリを戻さなくちゃ『ルパルク』のモデル降りるって言いだしたんだ。――あ。言っとくけど俺は営業部員として事務所に璃々のモデルを依頼はしたが、あいつ個人には私情を挟んで打診してないからな。璃々がどういう気持ちで引き受けたかは知らねえが、俺は公私混同してない。そこ誤解すんなよ」

そう念を押されて、私はすかさず心の中で反省した。

璃々さんがどういうつもりかは分からないけれど、周防さんは仕事に私情は持ち込まない。以前聞いた噂をうっかり信じて現状と結び付けて考えていたことを、猛省する。

「……で、さすがにそんなわがままは駄目だって、俺と璃々のマネージャーの長谷川さんとで説得してたんだよ」

「ひと晩中?」

「そうだよ。パーティーの後、アイツのマンション連れてかれてずっと。で、璃々が『朝までいてくれたら保留にする』っていうから、長谷川さん道連れにしてひと晩中部屋にいたんだよ。嘘だと思うなら長谷川さんに聞いてもいいぞ」

もはや疑う余地などなかった。

今朝の周防さんと璃々さんのやりとりを思い出せば周防さんが言っていることとつじつまが合うし、何より私のことをこれだけ一生懸命好きでいてくれる彼のことを疑う気持ちなど、私にはもうなかった。
 
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