俺様上司が甘すぎるケモノに豹変!?~愛の巣から抜け出せません~
仕事の連絡かなと思ったけれど、メッセージの着信画面を確認する彼の表情がみるみる渋いものに変わっていったのを見て、違うと察した。
「……璃々さん、ですか?」
「ああ。またマンションまで来たらしい。『どうして出ないの?』だって。あいつ、インターフォン鳴らしまくったんじゃないだろうな」
彼女が再び周防さんのマンションに突撃していたことに、私は密かに肝を冷やす。
煩わしそうにため息をつく周防さんを見て、私はまだ大きな問題が片づいていないことを改めて感じた。誤解が色々解けたとはいえ、璃々さんの復縁アタックが進行形なことに変わりはないのだ。
「困りましたね……」
ボソリとそう呟くと、周防さんはスマートフォンの電源を切ってスーツのポケットに乱暴にそれを突っ込んだ。
「……今は仕事相手だから、なるべく平和的に解決したいと思ってたんだけどな。あんまり聞く耳持たないならこっちも強硬手段とるか」
「え?」
なんか物騒なことをつぶやいたような気がして目をしばたたかせていると、周防さんは私のもとへ戻ってきて、「まあ、やるときゃやらないとな」と再びドライヤーのスイッチを入れた。