俺様上司が甘すぎるケモノに豹変!?~愛の巣から抜け出せません~
翌日の終業後。
「梓希さん」
会社を出た私は誰かに呼び止められ、足を止めてそちらを振り向いた。
ニコニコと笑顔で近づいてくるその人物の姿を見て、気まずさから一瞬逃げ出したくなったけれど耐えた。
「こ、小宮山さん……こんばんは」
「こんばんは」
小宮山さんとは昨日、周防さんの前でキスしたっきりだ。
あれは結局、惚れ薬が効いてなかったことを証明するための行為だったワケだけど、さすがになんだか顔が合わせづらい。
そう思って引きつった笑みを無理やり浮かべていると、小宮山さんのほうから「昨日はごめんね。いきなりキスしちゃって」と直球で話題に触れられた。
「い、いえ。こちらこそ、あの……力を貸してくださってありがとうございました」
「で、あれからどうだった?」
キスのことはさておき、協力してくれた彼には話す義務があると思い、私はあれから周防さんと仲直りしたことをかいつまんで話した。
すると小宮山さんは「そっか、仲直りできたならよかったね」と笑顔で私の頭をポンポンと撫でた後、「僕としてはちょっと残念でもあるけど」とその手を下ろしながら頬を軽く指で触れていった。