俺様上司が甘すぎるケモノに豹変!?~愛の巣から抜け出せません~
 
その週の土曜日、夜九時。

待ち合わせ場所の駐車場にやって来た小宮山さんの姿を見て、周防さんが一瞬顔をしかめた。

「こんばんは、周防さん。この間は目の前で失礼なことしてしまって、申し訳ありませんでした」

目の前まで来て足を止め頭を下げた小宮山さんに、周防さんも吊り上がりそうになる眉尻を無理やり抑え込んで「いえ。もう気にしてませんから」と笑顔で手を振る。

どう見てもまだはらわた煮えくりかえっているようにしか見えないけれど、小宮山さんはそれを素直に受けとめ、「ああ、よかった」とキラキラとした笑顔を浮かべた。もはや私にはこの人が天然なのか計算高いのか、よく分からない。

「それより、今日はご協力ありがとうございます。こんなこと頼んでしまってすみません」

気を取り直した周防さんがそう言うと、小宮山さんはカメラの入ったバッグを軽く持ち上げて得意そうに言った。

「いいえ。僕、実は大学生だった頃に週刊誌のカメラマンのアシスタントやってたことがあるんですよ。だからスクープ写真の撮り方は熟知してますんで、まかせてください」

小宮山さんのその言葉は何とも頼もしいけれど、私はこれから起きることを思うと緊張でとても安堵の笑みを浮かべることなど出来なかった。

私たちが今いる場所は都内のとある高級マンション……璃々が住んでいるマンションの裏手にあるコインパーキングだ。

私たちはこれから、周防さん曰く『強硬手段』をとるためにここへ集まった。
 
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