俺様上司が甘すぎるケモノに豹変!?~愛の巣から抜け出せません~
「小宮山さん、ここからで撮れそうですか?」
「うん、大丈夫そう。それにしてもすごいですね、周防さん。ここまでして今をときめく人気シンガーを振るなんて。いっそヨリを戻すって平和的な選択はないんですか? その方が案外喜ぶ人多かったりして」
「絶対ないです。俺は梓希以外興味ないんで。なんだったら小宮山さん璃々に紹介しましょうか? あきらめの悪いもの同士お似合いですよ」
「あ、あの、ふたりとも寒くないですか? か、カイロありますよ、カイロ」
そんなやけに物騒な会話をしながら待つこと四十分。
マンションの前に一台のタクシーが停まり、辺りを窺いながらひと組の男女が降りてきた。
「……来た!」
男女とも深くニット帽をかぶりそれぞれサングラスとマスクをしているけれど、輪郭や顔の一部からでもそれが璃々と相手の男優だとすぐ分かった。
ふたりがタクシーを降りてマンションの共用エントランスに入り、オートロックを解除する一連の流れまで小宮山さんがすべてカメラに収める。
と同時に周防さんが植え込みから飛び出してエントランスに駆け込み、エレベーターを待っている璃々さんに呼びかけた。