俺様上司が甘すぎるケモノに豹変!?~愛の巣から抜け出せません~
 
「周防は? お前面食いだからチェックきびしそー」

横瀬がしょーもないことを言ってくる。

四年前にシンガーの璃々と付き合ったせいか、俺は面食いだと周囲に思われているらしい。

まあたしかに璃々はかなり顔面レベル高い方だけど、別にそこに惹かれた訳でなく。

若気の至りとしか言いようがないのだが、あの頃の俺は〝芸能人と付き合ってる自分〟にかなり酔っていたのだと思う。

まあ俺、自分でもナルシストだと思うし。ってか自分に過剰に自信がなけりゃ営業なんてやってらんねえし。

それでも今思うとずいぶん恥ずかしいやつだと我ながらあきれるけれど、おかげで璃々にはだいぶ振り回されて痛い目も見たし、正直、芸能人はもういいやっていうか、女はしばらくいいかなって思うくらいには成長した。

そんなわけで今年の新入社員で誰が可愛いかなんて心底どうでもよかったりするので、俺は付け合わせのポテトを口に運びながら「わかんねー」とテキトーに流す。

それを聞いた横瀬はやっぱり勘違いしたようで、「お眼鏡に適う子がいないってこと? うわ、やっぱきびしー」などとひとりで盛り上がっていた。

俺があんまり乗り気じゃないのを見抜いたのか、竹下が「じゃあ今年は池田さんと鈴木さんのツートップっすかね」とまとめに入ろうとする。

しかしあまり空気に敏感ではない横瀬が「いや待て。実はもうひとり伏兵が」と得意げに語って話題を続けた。
 
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