俺様上司が甘すぎるケモノに豹変!?~愛の巣から抜け出せません~
 
クリエイティブ部員が急遽ひとり辞めてしまい、そいつの分の仕事を他の部員で請け負うため、クリエイティブ部がちょっと忙しない時期があった。

で、自分の担当だけでもいっぱいいっぱいなのに、椛田は投げられたその仕事をいくつか請け負って、キャパオーバーしてぶっ倒れてしまった。

三日徹夜のうえ、いつからか飯を食うのを忘れていたという。阿保か。

さすがに馬鹿だと思った俺は、椛田が一泊の入院から戻ってきた後に「お前、馬鹿だろ」と素直にツッコんだ。

「自分で抱えられる分量ぐらいわきまえろ。無理だと思ったら正直に言って周りのやつに助けてもらえ」

そう説教した俺に、椛田は涙目で怯えた顔をしながら「でも」といっちょまえに反論してきた。

「ほかの人に助けてもらったら、今度はその助けてくれた人が倒れちゃうじゃないですか。だったら、どうせ倒れるなら一番役に立たない私の方がいいかと思って……」

なんで倒れるの前提なんだよ。ふつー倒れねえんだよ。まずは誰も倒れないで仕事することを考えろよ。

とまあ、ツッコミどころしかないけれど、とりあえず分かったのは。

こいつは自分ががんばることで他の誰かが助かるなら、わりと当たり前にがんばること。

そういうやつなんだってことが新たに分かって、俺は不覚にもここで完全な恋に落ちてしまった。しかも重度の。
 
< 220 / 224 >

この作品をシェア

pagetop