俺様上司が甘すぎるケモノに豹変!?~愛の巣から抜け出せません~
 
危ないところだった。俺もあいつに迫ってたら同じ運命をたどっていた可能性が大きい。

椛田梓希は男慣れしていない。ガツガツいくとほぼ百パーセント引かれる。しかも押しに弱そうに見えて、きっぱり拒絶する。

いきなり恋人とか男女の関係を求めるのは悪手だと理解した俺は、密かに周囲をけん制しつつ、まずは椛田にとって〝一番仲のいい異性〟のポジションに収まることにした。

あとはまあ、打ち解けてくれたら徐々に距離を縮めて……と画策していた俺は、自分の口の悪さと少々Sっ気のあるやりとりのせいで、椛田の恋愛圏外に出てしまっていたことにやがて気づく。

……いや、だってさあ! 困らせたくなるんだよ、あいつ! 可愛いから!

あと口には出せないけど、俺はあいつへの軽口のあとに全部「可愛い」って付けてるから! 「今日も大福みたいだな(かわいい)」「馬車馬のように働け(めっちゃかわいい)」って感じで!

……けどそんなのが通じてるわけもなく、あれ? 俺こいつに怖がられてない?って気づいたときには手遅れだった。



――周防遥。二十九歳。恋愛にかかわらず人間関係は常に好調に生きてきたこの俺が、初めて挑む難攻不落の真剣な恋。

椛田梓希を振り向かせるためならば手段は選ばない。この際祈ってみようか、あいつの好きなスピリチュアルとやらに。

神様、お星様、大福様。この俺に一生に一度の奇跡を、なんちゃって。

我ながら滑稽なほど必死なこの想いに、果たして恋の神様とやらが微笑む日は来るのだろうか。



【Continue to the story of azuki……】
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