俺様上司が甘すぎるケモノに豹変!?~愛の巣から抜け出せません~
 
広告代理店というのはその名の通りクライアントからオーダーされた広告を作るのが仕事だ。広告を作るにはまず社内でチームを組む。うちの場合はたいてい、メインで企画を進める営業部員がひとり、データから顧客のニーズを計るマーケティング部からふたり、そしてポスターや映像、キャッチコピーやロゴなど美術を担当するクリエイティブ部からふたりの計五人でチーム編成する。

もちろん案件が大きければ人数は増えるし、それ以外にもカメラマンなど外注のスタッフもいたりする。

懇意にしているクライアントからはストレートに依頼が来ることもあるけれど、たいていは他社との競合プレゼンに勝たねばならない。そして見事プレゼンに勝って企画が通ったら、セールスプロモーション会社や映像制作会社らと改めてチームを組み、広告制作に取り掛かるのだ。

今まで地方局ラジオのCMや小さな会社のポスターしか任せてもらえなかった私だけれど、今回は初めて大手お菓子メーカーの新商品の企画に参加させてもらえることになった。

このチャンス、絶対モノにしたい!と意気込んだ私は、営業部員の駄目出しにも負けず、ADの嵐のような修正指示にも負けず、連日の睡眠不足にも負けず、なんとか使ってもらえるCMコンテを完成させて、今日のプレゼンを迎えたのだ。

(大丈夫……! あんなに頑張ったんだもん、絶対にクライアントだって気に入ってくれるはず)

会社のビルの前についた私は、深呼吸をしてシャツの上からガーネットのネックレスをギュッと握りしめる。

ガーネットは努力を実らせてくれる成功の石。きっと私の努力を後押ししてくれるに違いない。

「よし!」

気合を入れて社内に入ろうと顔を上げたときだった。
 
< 4 / 224 >

この作品をシェア

pagetop